緑に輝くオーブの塗り方

はじめに

ストレスなく筆でフィギュアなどの模型を美しく塗れることで話題のシタデルカラー、使ってますか? 今回はグリーンに輝くオーブを上手く塗る方法を試行錯誤して見付けたので、情報共有です。

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緑に光るオーブ


 

 

画像:ウォーハンマー公式サイトより

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necron_orb_from_warhammer_official

 

Hexwraith FlameとTesseract Glow?

ぼわっと緑に光る効果を出せるTECHNIC系のカラーといえば、Hexwraith FlameとTesseract Glowがありますが、正直公式サイトを見ても、どっちを使えば良いか分からない。

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Hexwraith FlameとTesseract Glow

という訳で両方塗ってみました。

テスト用のピースは3Dプリンタで大量に出力しました。Corax White(Base)とAbaddon Black(Base)で球と爪を塗り分けておきます。

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3d-printed orbs

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Hexwraith FlameとTesseract Glow

左がHexwraith Flame、右がTesseract Glowを、それぞれCorax White(Base)の上から全体に一度塗ったものです。黄緑色なTesseract Glowの方がオーブ感がありますね。

一方、Hexwraith Flameは青よりの緑で、黄色味がありませんのでオーブ感がない。ゴーストとか無機質なものが合いそうです。

オーブ感のあるTesseract Glowを中心に試していきたいと思います。

 

ベストな塗り方:

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White Scar+Flash Gitz Yellowでハイライト
  1. BaseとしてCorax Whiteを全体に塗る
  2. TECHNICのTesssract Glowを全体に塗る。
  3. White Scarにほんの少しだけFlash Gitz Yellowを混ぜ、Lahmian Mediumで超薄めたものを、トップの光って欲しいところを中心に、3〜5回重ねて塗る。
  4. 最後に、Tesssract GlowをLahmian Mediumで半分ほどに薄めて、爪の周りなど緑が残って欲しい部分を少し緑に戻す。

 

↑の画像、右が手順2.まで塗った状態、左が手順4.まで終わった状態です。変化が分かるでしょうか。手順3.の黄色っぽい白は、Dorn Yellow(Layer)が良さそうですが、持ってないので調色しました。

 

まぁまぁベターな塗り方:

4つあります。

 

1つ目。この塗り方が「一番簡単&確実&綺麗」でした。

まずHexwraith Flameでシェーディングします。影になってほしい部分だけに、Hexwraith Flameを何度も塗り重ねます。沢山重ねた部分が濃く暗くなります。Hexwraith Flameの濃度はかなり薄く、Lahmian Mediumで薄める必要はありません。原液のままでも筆ムラにならず、境目もほとんど分からなくなります。

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Hexwraith FlameでShade

次に、全体にTesssract Glowを塗って完成です。

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Hexwraith Flame(as Shade) + Tesssract Glow(TECHNIC)

 

2つ目はTesseract Glowを塗るだけです。これだけでも綺麗。

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Hexwraith Flameだけ

ただ、影の部分も明るく表現されてしまうので、それを改善したい方は↑のベストな方法をやりましょう。

3つ目は、シェードとハイライトを入れる方法です。

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Hexwraith Flameでシェード+ White Scarでハイライト

Hexwraith Flameで影になって欲しい部分にシェーディングしたあとで、トップにWhite Scar(Layer)でハイライトを入れています。グラデーションで重ねて塗りするために、White ScarはLahmian Mediumで超薄めています。1:5ぐらい。

ただ、土台のCorax White(Base)はややグレーがかっているとはいえ、かなり明るいので、White Scarでハイライトを入れても視覚上あまり効果がないです。この方法は土台を白じゃなくてグレーにすれば良いのかもしれませんね。

 

4つ目はWarpstone GlowでシェードWarpstone GlowはLayerなので、Lahmian Mediumで超薄めるのですが、薄めた色を見たらHexwraith Flameそっくりでした。つまり、Warpstone Glow(Layer)を薄めたもの = Hexwraith Flame(Technic) ですね。ならば最初からHexwraith Flameでシェーディングすれば楽ちんです。

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Warpstone Glowでシェーディング

ダメだった塗り方:

大量にあるので、一気に紹介。

・Nuln Oilでシェードを全体に入れる。土台が明るい白なので明るさがある程度残ることを期待したのですが、残念ながら、全く光らなくなりました。なんだろう、この黒い塊は。

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Nuln Oilでシェード

Tesssract Glowを二度塗り。効果がなく意味がないです。左が一度塗り、右が二度塗り。見ても区別が付かないですね。

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二度塗り

Hexwraith Flameの上からFlash Gitz Yellowでフィルタリング。黄色味のないHexwraith Flameに黄色味を足してやるために、LayerのFlash Gitz YellowをLahmian Mediumで超薄めて、全体にフィルタリングとして塗りました。すると、Tesssract Glowそっくりな色味になりました。ただ、Tesssract Glowと比較すると少し鮮やかさに欠けるので、Tesssract Glowを持ってるならばこの方法を選択する意味はないです。

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Flash Gitz Yellowでフィルタリング

Dirty MetalにTesssract Glow。LeadbelcherをBaseとして塗り、Agrax Earthshadeで影になって欲しい部分だけシェーディング、Stormhost Silverでハイライトを入れます。ここまでが公式にあるDirty Metalという塗り方ですね。これにTesssract Glowを重ねました。光源が近くにあるとギラっと反射しますが、全体的には鈍い輝きになりました。一部をStormhost Silverでハイライトするのではなく、全体を覆ってしまうのはありかもしれません。

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Dirty MetalにTesssract Glow

 

まとめ:

緑色に輝くオーブを表現したいなら、Corax White(Base) → Tesssract Glow(TECHNIC) → White Scar+Flash Gitz Yellowでハイライト がおすすめです。

 

では、快適なシタデルペインティングライフを。 

 

ギターを科学する 〜ピックアップの音量の真実 パッシブ編〜

前ブログにてアクティブピックアップの音量を測定し、比較した。同様にパッシブでも比較する。 

どうやって測ったのか?

 使ったピックアップはSeymour DuncanのJBと59neck(図1)。力強く腰のある音が特徴で、DeMarzioやBartoliniと並んでパッシブの定番である。またピックアップから4芯が出ているので、シングルとハムバッカーをタップで切り替えることが可能。シングル/ハム、ミックス/単体 を変えることで、8通りの組み合わせが存在する。
 

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図1 セイモアダンカン社製ピックアップに置いたスピーカー
 pure dataのパッチ(図2)は前ブログから変えていない。シンセ波形をオーディオインタフェースから出力し、スピーカーで鳴らし、それをピックアップで拾い、オーディオインタフェースから入力された音のエンベロープを数値化する。

 

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図2 PDのパッチ

どんな音量? ハムとシングル 単体での比較

 まずピックアップを単体で音を拾い音量を測定した。シングルとハムバッカーはタップで切り替える。

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図3
 
 全体的に59nよりJBの方が音量が大きいというピックアップの特性が見られる。通常JBはブリッジ側に配置しバッキングに使用する理由が見て取れる(EMGの81と85の使い分けと同じ)
 
 また、シングルとハムで比較したときに、59nもJBもシングルの方が音量が大きい。これは今まで「ハムバッカーはシングルの2倍拾うので音量が大きい」と、まるで「コイルが多いハムバッカーは最強」のように思い込んでいたが、真逆の結果である。ハムバッカーがシングルよりも音量が小さい理由は、ハイインピーダンスな2つのコイルをシリーズ接続(直列接続)するため、得られる電圧以上に負荷となるためであろう、と推測できる。それにしても驚いた!

シングルに固定、単体とミックスでの音量の比較

 それぞれのピックアップをシングル出力にし、ピックアップセレクターで切り換えた場合。ミックス時はパラレル接続となる。

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図4
 まず、サイン波とノコギリ波の場合、ミックス時におおよそ中間的な音量になる。しかし、ホワイトノイズを入力すると、シングル2つをミックスした時の音量は、単体よりも如実に大きくなる。
 
 シングルx2のパラレル接続とはいわゆるストラトハーフトーンと同じ接続であるため、高次倍音がカットされマイルドな音が出る、というのが一般的な認識である。測定結果を無理矢理考察するに、ピックで弾いた時のピッキングノイズを良く拾うのでニュアンスが出やすい、ということか。実際に弾いて確認したい。 

ハムに固定、単体とミックスでの音量の比較

 次に、ハムx2をピックアップセレクターで切り換える配線の場合。前のブログ記事でアクティブでの計測のパッシブ版である。

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図5
 傾向は一つ↑のケース(シングルに固定)と同様である。ハムx2をミックスするとホワイトノイズを良く拾うので、弾いたニュアンスがどう出るか、実際に弾いて確認したい(要は結論の先延ばし その2)

ミックス時のシングル/ハムを組み合わせた時の音量の比較 

 2つのピックアップをミックスすることは変えずに固定し、それぞれのピックアップのシングル/ハムをタップで変えた比較。

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図6

 これら4つの組み合わせにおいて、シングルx2の場合の音量が最も大きくなる。逆にハムx2の音量が最も小さい。これはパッシブのインピーダンスの大きさゆえに打ち消す力が働き抵抗となることが推測される。ここでもピックアップのシングル率が増えるとホワイトノイズを良く拾う傾向が出ている。
 

考察と最後に

どんな組み合わせにおいても「ハムよりもシングルの方が音量が大きい」という結果になったことには驚きである。これが分かっただけでも計測した意義があった。
 
 次にアクティブ編と合わせた総括を行う。本測定結果から言えることは、アクティブに比べてパッシブは入力する波形によってその傾向がガラリと異なることなることである。つまり演奏時の弾き方、弦の材質の選び方、ボディでのピックアップの位置、などのピックアップ以外のパラメータが複雑に影響してくることが想像される。つまり、アクティブピックアップを載せれば、どんな演奏者やどんな楽器であってもそこそこちゃんとした音が鳴る、ということである(あくまで比較として)
 
 実際にはピックアップを選択するときに「高音域が抜けて出てくるもの」「中音域に粘りがありリードを取りやすいもの」といった欲しい音のイメージから始まる。ゆえに、本評価において音量の現実を知ったところでそれだけでピックアップを選択することはできず、結局音質を決めるピックアップの特性を無視することはできない。つまり、音量の変化を気にすることに(結果的に)大きな意味はなく、それを気にする人も居ない訳である。そういった情報を記載したサイトがないことも納得できる。
 

*1:※グラフ中のSはシングル、Hはハムバッカー

ギターを科学する 〜ピックアップの音量の真実 アクティブ編〜

ギターのピックアップ、その接続の仕方によってどう音量が変わるか、測定してみた。
 

なぜピックアップの音量を測ってみたのか?

きっかけは所有するギターのピックアップをパッシブからアクティブに変更しようとしたこと。ギター工房に頼まず自分で配線しようとネットで配線の例を検索していたのだが、レスポールストラトなどのメジャーなギターの配線例は数多く見つかったものの、「何故、その配線にしたのか? どんな音になるのか?」という説明や原理が書かれたサイトは見付けられなかった。
 
ギターに搭載するピックアップの数は1つから3つとバリエーションがあり、単体で使って出力したり、複数を繋いで出力したり、欲しい音に合わせて様々な組み合わせを演奏中に切り替える。音楽的感性に基づき感覚だけでピックアップの組み合わせを選べば良いのだが、所詮ギターは自然現象を利用して音が鳴らしているに過ぎず、その原理を正しく理解することは演奏に役立つことは自明である。そうならば、と自分で音量を計測してみた。本記事はほとんどの人には必要ない情報かもしれないが、自分のような「ちゃんと理解しないと気持ち悪い」人に向けて書く。
 

どうやって測ったのか?

ギター用アクティブピックアップにおいて代表的なものといえば、EMG社製の85と81。プリアンプをピックアップの中に内蔵しており、ローインピーダンスゆえにノイズの少ないことと、Hot端子に9v電池を繋ぐだけで利用できる手軽さが特徴。
音量を測定して評価するには、以下の2つの仕組みが必要である。
  1. ピックアップに一定の磁界の変化を与え続ける装置
  2. ピックアップから出た電気信号を音量として数値化する装置
1.の実現についてはギターの弦を常に同じ力で弾くことを最初に考えたが、そのデータに客観性がないため、磁界変化を連続的に発生させる装置が必要である。ちょうどジャンクのスピーカーが2つ余っていたので、PCから音をスピーカーで再生して、スピーカーの磁界変化をピックアップで拾わせることにした。また、波形は複数を試したいため、Pure data(以下PD)でパッチを作成し、正弦波(osc~)、ホワイトノイズ(noise~)、ノコギリ波(phasor~)を出力できるよう用意した。
 
2.の実現については、素直にPCを活用することしか考えられない。Pure dataでパッチを作成し、入力された音(adc~)をエンベロープenv~)で音量を数値として表示する。音量はRMS(二乗平均平方根)した値をdb(デシベル)に変換し評価する。
 
PCからスピーカーで音を出力し、EMGピックアップで拾った信号をPCへ送るという流れは、写真1のようになる。PDのパッチは、図2のように作成。
 

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写真1: ピックアップとスピーカー

 

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図2: pure dataのパッチ

スピーカーから出力する波形は、サイン波(600Hz)、ホワイトノイズ、ノコギリ波(400Hz)の三種類。ピックアップ側の回路は、「EMG 85単体」「EMG 81単体」「EMG 81+85ミックス」の3種類を用意。EMG 81+85ミックスは2つのピックアップからの出力信号を結線してミックスする、いわゆるパラレル接続/パッシブミックスである。また電源は9vと18vの2種類を用意。通常は9vを使用されるが、「18vにモディファイするとアクティブくさい音がマシになる」と言われているため、本評価のメニューに入れた。
 
測定する前は「内蔵されたプリアンプの出力をパッシブミックスすると、81の音量+85の音量と加算され、かなり大きな音になるのではないか?」と仮説を立てていた。
 

どんな音量?

図3が測定結果である。

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図3: 測定結果のグラフ
 
次のような特徴が見出だせる。
  • EMG 85と81の出力を比較すると、81の方が出力が大きい
  • 81+85ミックスすると、81と85を足して2で割ったような中間的な音量になる
  • 供給する電池電圧 9vと18vで比較すると、EMG 81単体はほとんど差異がない。一方、EMG 85は18vだと出力が下がる。
 

考察と最後に

ピックアップの特色からEMG 81はリア/ブリッジ側、85はフロント/ネック側に配置されることが多い。曲中でバッキングする際には音圧がありしっかりした音でリフを刻むことに向いているピックアップが81であり、ソロでリードを弾くときに強弱のニュアンスが出やすい81に切り替える、というのが音量という切り口で納得できた。
 
また、「パッシブミックスすると中間的な音量になる」という結果は、「音量がバカでかくなる」という測定する前の仮説とはまったく異なるものとなった。81と85のインピーダンスはどちらも10kΩであり、ミックス時には片方の電気信号がもう片方の負荷(=インピーダンス)により制限を受けて低下している、と考えられる。オペアンプミックスしない限り音量が倍になることはないのである。ハムバッカー2つを並列で繋ぐ機会は、演奏中はあまりないと思われるが、安心して使っていきたい。
 
18vの電源電圧については、この測定結果だけでは何とも言い難い。「18vはパッシブのようにニュアンスが出やすい」と言われているため、「出力音量の大小」という評価軸では判断できない。
 
最後に、本記事のような音を扱う実験にはPDがお手軽かつ強力なプログラミングツールだと実感した。次の記事では、パッシブ・ピックアップで測定した結果をまとめたので、その驚きの結果を是非ご覧いただきたい。
 

簡単にディレイのワープを過激化する方法(DD-6)

■DD-6とは?

 BOSSのデジタルディレイ DD-6と言えば、使いやすく、音質の良く、かつ手頃な価格で手に入る、ある種定番のような機種であります。この機種が特筆すべきな点は、実用的な機能だけでなく、ワープという飛び道具機能が付いていることです。ペダルを踏み続けている間はフィードバックが最大になり、音が無限に発振します。どんどん音が重なり凶暴に音圧を増していくさまは、まさしく飛び道具。しかも、BOSSのコンパクトDDシリーズでこの機能を有しているのはDD-6だけです。飛び道具好きは中古市場で見つけたら迷わず買いましょう。

 

■なぜ作ったの? 

そんな貴重で愛すべきワープ機能、使っていると「発振してるんだったら、ディレイタイムをグリグリと回して変化させたいよね」と、アナログディレイの時代からの定番アクションをきめたくなります。
 
しかし同時に「演奏中にしゃがんでツマミを回すのはみっともない」(個人の感想です)という気持ちが私にはあります。ステージでお客さんに音楽を届けている以上、その時間中は全力のパフォーマンスでお客さんとコミュニケーションしないといけません(個人の感想です)。
 
そこで、ペダルを踏んだまま直接ツマミを回せる方法を考え出しました。
 

■何を作ったの?

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DD-6に、足の裏で回せるツマミを追加しました。操作方法とその音の効果が分かるよう、Youtube動画を用意しました。
 
動画は短いですが、実際には時間を忘れてグルングルン遊んでます。この感覚、かなり癖になります。
 

■どうやって作るの?

 そんな中毒性の高い改造ワープ機能の作り方です。
 
用意する材料:
  • 50kΩの可変抵抗器(Bカーブ)
  • この可変抵抗器に合うツマミ
  • CYMPAD オプティマイザー/シンバルワッシャー(ライド用、スポンジとして使用)
  • 色違いの線材を3本
  • ボールベアリング(※より快適な操作感にこだわるなら) 
まず、バラバラにします。ネジはドライバーで、ナットはレンチで外します。ツマミは刺してあるだけなので、抜き取ります。可動するペダルの上に貼り付いている黒い滑り止めのゴムと、裏面にある9v電池を固定するためのスポンジを取り除きます。

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次に電動ドリルで可動するペダルと、筐体本体に穴を開けます。穴の大きさは、可動ペダルの方は直径6.5mm、本体は3〜4mmです。可動ペダルに開ける穴の位置は、元々黒いゴムが付いていた、窪んでいるエリアです。ここの左から2.9mm、下から2.9mmの位置に、穴の中心をもってきます。可動ペダルに穴が開いたら、可変抵抗器を取り付けます。簡単に動かないようにしっかりナットを締めましょう。

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ディレイタイムの可変抵抗器を基板から取り外します。基板には4つツマミが並んでいますが、右から二番目がディレイタイムです。これを取り外すのに使う道具が、ハンダごてとハンダ吸いテープです。ハンダを3箇所吸い取ったら、簡単に可変抵抗器は基板から取り外しできます。

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取り外した基板にケーブルを取り付けます。線材の先をワイヤーストリッパーで剥き、ハンダ付けします。線3本の色は何でも良いですが、どこに何色を取り付けたか、メモしておきましょう。

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線3本を穴に通します。その後、基板を全て元の位置に戻します。基板はLEDを固定している基板、可変抵抗器を固定している基板、メインの基板の3枚ありますので、この順で元に戻しましょう。可変抵抗器3つもナットで固定します。もう筐体の中をいじることはありませんので裏蓋もネジ止めします。そして、線を可動ペダルの可変抵抗器に結線します。色を間違えないように。ハンダ付けしたら、可動ペダルをネジ止めして戻します。

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ツマミを取り付けます。飛び出ている可変抵抗器の軸にツマミ、スポンジの順で刺し込みます。足で踏むのでしっかり奥まで入れましょう。これで完成です。全ての作業を終わる前に、足で踏んでグリグリ回してグラつきかないか、確認しましょう。これで完成です。

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■より快適な回転と安心感を求める方向け

足で踏むとそれなりの力がかかります。しかも可変抵抗器の軸にだけかかることになるのですが、そもそも可変抵抗器は体重をかけて操作するように設計されていません。回して演奏している最中に軸が折れたり、可変抵抗器の中が壊れるリスクがあります。
 
これを解決するためにベアリングをツマミの下に敷くことにしました。ベアリングはスラストベアリングという、上からの力を受け止められるものです。一般的な電子部品店やホームセンターでは売ってませんので、ネット通販で購入しましょう。
 

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  • IKO 日本トムソン AS1226 スラストワッシャ(IKO-AS1226)
  • IKO 日本トムソン NTB1226 スラストニードルベアリング(IKO-NTB1226)
また購入の際に同サイズのワッシャー2枚も一緒に買いましょう。それぞれ内径12mm、外径26mmです。
 
取り付け方法は簡単です。大きなツマミと、中のツマミを一旦はずします。可変抵抗器の軸に、ワッシャー、ベアリング、ワッシャーの順で通します。そして再びツマミ、大きなツマミを取り付けるだけです。以前より少しツマミの位置が高くなりますが、これはベアリングとワッシャーがツマミを持ち上げ、完全に支えているからです。つまり、軸には体重がかからないようになりました。

f:id:nisshan_x:20170212154629j:plain → f:id:nisshan_x:20170212154641j:plain → f:id:nisshan_x:20170212154651j:plain → f:id:nisshan_x:20170212154700j:plain

 
ベアリングを入れたお陰で回転のスムーズさが増しました。回り過ぎて足をひねって捻挫しそうです。狙った通りの効果が出ました。
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■最後に

昔からオリジナルのエフェクターを作成してきましたが、こんなに簡単な工作で、素材の持ち味を最大限にブーストできたのは初めてです。他に面白いアイデアを思いついたり、トライした方は是非とも教えてください。
 
 

キング・メトリックリムゾン ~伝説のバンドのセットリストを統計分析~

 

■動機:

タイムリーに2つの動機が重なったので、私含めたプログレッシャーのあいだで起こっているクリムゾンフィーバーが終わらないうちに、ぱぱっと分析してみました。
  • 今(2015年12月)にキングクリムゾン (King crimson)が来日し、日本中をツアーしている。大絶賛の嵐のショーは毎日セットリストが異なるため、目当ての曲が聞けるのかどうか、非常にドキドキ。
  • 統計/ビッグデータの分析に用いられるツールR(アール)を使えるようになりたい。
 

統計データの入手:

同じくクリムゾン好きなケイミンさん(https://twitter.com/KaminFlute)が曲の演奏頻度を集計されていました(https://twitter.com/KaminFlute/status/668696445453660160)。それを見て感銘を受け、作成された統計データを分けて頂きました。なお、ケイミンさんはsetlist.fm(http://www.setlist.fm/)からコピペしてデータ化したそうです。
 

ツール

前述の通りRです。エクセルの分析ツールを使った統計分析は経験しているのですが、Rは初めてなので、そのインストールからコマンド、プログラミング方法まで全てネットで調べながらマネをしました。
 

ヒストグラム

特定の曲の、セットリストの中での順番を調べ、その分布を調べました。
グラフで見るとおおよその特徴が感覚で掴めますので、統計分析のいろは的定番であることを改めて実感しました。
 

相関係数:

回帰分析を行う時に各変数間の関係の強さ、つまり相関係数(correlation)をまず見ます。今回は「ある日に、曲Aを演奏する時、別の曲Bも演奏する可能性」として使えるので、分析してみました。
 

■途中確認:

上記分析と並行して、12/16の実際の公演が東京で行われました。そのセットリストを見ながら、振り返りです。


精度は悪くない、良さそうな結果ですので、このまま分析を続けます。

セットリストの遷移確率

「ある曲をやったら、次にやる曲はこれだ」と分かると、ライブを見てる最中に不要なストレスを感じることが減ります。エクセルでのデータ整理と、R上でのプログラミング(と言ってもforループを回した程度)で、確率を計算しマトリックス状に一旦出力しました。そこから確率の高いものだけピックアップし、手書きでまとめたのがこの遷移図です。

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もう少し具体的に見方を説明します。
  • 観に行ったその日に目当ての曲を演奏するかどうかの確率を知るには、◯の中の数字を見ます。例えばEpitaphは63%なので、だいたい3日に2回演奏します。
  • ライブを観てる最中に次の曲を予想するには、黒い→(矢印)と添えた数字を見ます。例えば本編最後にStarlessをやったら、次にアンコールの頭にDevil Dogs of Tessellation Rowをやる確率は48%なので半々です。
  • 緑の点線は仲間の関係を示します。例えばPeace - An EndをやるとRadical Action (To Unseat the Hold of Monkey Mind) IIをやる確率は85%です。
  • オレンジの点線は排他の関係を示します。例えば、ジャッコのThe light of the dayがセットリストに入ると、MeltdownやEasy moneyがセットリストから落ちる確率は80%です。
以上は確率ですので必ずそうなるとは限りませんが、十分目安にはなりますね。
 
ちなみに、フレンドリーエゴサーチャー(笑)のパット・マステロットが見付けたときに分かるように英語でもツイートしました。タイトルはStarlessとStatistics(統計学)をかけ合わせてますが、強引ですね。
 
今回は時間の制約で手書きしましたが、次回は自動生成したいです。この遷移図を自動で作成する手段/ツールなんてありますかね?
 

■セットリスト内での順番を俯瞰で見る:

最後にどの曲がどの順番で現れるか、今回ツアーで演奏している29曲全てを並べ、その傾向を見ました。

まとめと今後:

このブログを書いた日付は2015/12/17であり、日本ツアーが東京、高松、名古屋と3回の公演が残ってますので、↑の見立てがどこまで当たるのか、いやいや予想外のことが起こるのか、毎日楽しみに確認したいと思います。そう、私は会場に居なくても、私の思考は会場のなかに居るのです。
 
短い時間で結果を出すことが目的だったので、やりたいことはまだ沢山ありますが、意味のある結果が出せて良かったです。今後の調べたいこと/やりたいことは以下です。
  • 前述の自動で遷移図を作る方法
  • 地域ごとの傾向: 北米、欧州、日本を比べると何か違いがあるのか、例えば地域の観客の好みに合わせてる、とか。
  • 時系列的な変化: 2014年から2015年にかけて日が経つ毎にある曲の頻度が増えていたり、順番が変わっていたり、など。
  • もっとRの機能を使いこなす
 
また、今回分析するにあたり、私の属性(バンドマン)であることが分析スピードアップに役立ちました。私はライブ演奏し、セットリストを作る側なので、バンドがセットリストを作るときに工夫するツボや悩むポイントについて勘所があります。なので、直感的に仮説を立てながら分析を進められました。
 
もしロバート・フリップがクリムゾンのセットリストを作っているのならば、この統計分析により彼の思考過程の一部を覗き見することができたことになります。なんてこった! 超やばいね。
 
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■追記: 

ハッシュタグを付けてtwitterinstagramに投稿してたら、なんとロバート・フリップ先生に見付かり、Facebookでshare頂きました。あわわわ、明日以降のセットリスト作りに影響しませんように。。。

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The Elements Tour Box 2015

The Elements Tour Box 2015

 

 

 

Live at the Orpheum

Live at the Orpheum