キング・メトリックリムゾン ~伝説のバンドのセットリストを統計分析~

 

■動機:

タイムリーに2つの動機が重なったので、私含めたプログレッシャーのあいだで起こっているクリムゾンフィーバーが終わらないうちに、ぱぱっと分析してみました。
  • 今(2015年12月)にキングクリムゾン (King crimson)が来日し、日本中をツアーしている。大絶賛の嵐のショーは毎日セットリストが異なるため、目当ての曲が聞けるのかどうか、非常にドキドキ。
  • 統計/ビッグデータの分析に用いられるツールR(アール)を使えるようになりたい。
 

統計データの入手:

同じくクリムゾン好きなケイミンさん(https://twitter.com/KaminFlute)が曲の演奏頻度を集計されていました(https://twitter.com/KaminFlute/status/668696445453660160)。それを見て感銘を受け、作成された統計データを分けて頂きました。なお、ケイミンさんはsetlist.fm(http://www.setlist.fm/)からコピペしてデータ化したそうです。
 

ツール

前述の通りRです。エクセルの分析ツールを使った統計分析は経験しているのですが、Rは初めてなので、そのインストールからコマンド、プログラミング方法まで全てネットで調べながらマネをしました。
 

ヒストグラム

特定の曲の、セットリストの中での順番を調べ、その分布を調べました。
グラフで見るとおおよその特徴が感覚で掴めますので、統計分析のいろは的定番であることを改めて実感しました。
 

相関係数:

回帰分析を行う時に各変数間の関係の強さ、つまり相関係数(correlation)をまず見ます。今回は「ある日に、曲Aを演奏する時、別の曲Bも演奏する可能性」として使えるので、分析してみました。
 

■途中確認:

上記分析と並行して、12/16の実際の公演が東京で行われました。そのセットリストを見ながら、振り返りです。


精度は悪くない、良さそうな結果ですので、このまま分析を続けます。

セットリストの遷移確率

「ある曲をやったら、次にやる曲はこれだ」と分かると、ライブを見てる最中に不要なストレスを感じることが減ります。エクセルでのデータ整理と、R上でのプログラミング(と言ってもforループを回した程度)で、確率を計算しマトリックス状に一旦出力しました。そこから確率の高いものだけピックアップし、手書きでまとめたのがこの遷移図です。

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もう少し具体的に見方を説明します。
  • 観に行ったその日に目当ての曲を演奏するかどうかの確率を知るには、◯の中の数字を見ます。例えばEpitaphは63%なので、だいたい3日に2回演奏します。
  • ライブを観てる最中に次の曲を予想するには、黒い→(矢印)と添えた数字を見ます。例えば本編最後にStarlessをやったら、次にアンコールの頭にDevil Dogs of Tessellation Rowをやる確率は48%なので半々です。
  • 緑の点線は仲間の関係を示します。例えばPeace - An EndをやるとRadical Action (To Unseat the Hold of Monkey Mind) IIをやる確率は85%です。
  • オレンジの点線は排他の関係を示します。例えば、ジャッコのThe light of the dayがセットリストに入ると、MeltdownやEasy moneyがセットリストから落ちる確率は80%です。
以上は確率ですので必ずそうなるとは限りませんが、十分目安にはなりますね。
 
ちなみに、フレンドリーエゴサーチャー(笑)のパット・マステロットが見付けたときに分かるように英語でもツイートしました。タイトルはStarlessとStatistics(統計学)をかけ合わせてますが、強引ですね。
 
今回は時間の制約で手書きしましたが、次回は自動生成したいです。この遷移図を自動で作成する手段/ツールなんてありますかね?
 

■セットリスト内での順番を俯瞰で見る:

最後にどの曲がどの順番で現れるか、今回ツアーで演奏している29曲全てを並べ、その傾向を見ました。

まとめと今後:

このブログを書いた日付は2015/12/17であり、日本ツアーが東京、高松、名古屋と3回の公演が残ってますので、↑の見立てがどこまで当たるのか、いやいや予想外のことが起こるのか、毎日楽しみに確認したいと思います。そう、私は会場に居なくても、私の思考は会場のなかに居るのです。
 
短い時間で結果を出すことが目的だったので、やりたいことはまだ沢山ありますが、意味のある結果が出せて良かったです。今後の調べたいこと/やりたいことは以下です。
  • 前述の自動で遷移図を作る方法
  • 地域ごとの傾向: 北米、欧州、日本を比べると何か違いがあるのか、例えば地域の観客の好みに合わせてる、とか。
  • 時系列的な変化: 2014年から2015年にかけて日が経つ毎にある曲の頻度が増えていたり、順番が変わっていたり、など。
  • もっとRの機能を使いこなす
 
また、今回分析するにあたり、私の属性(バンドマン)であることが分析スピードアップに役立ちました。私はライブ演奏し、セットリストを作る側なので、バンドがセットリストを作るときに工夫するツボや悩むポイントについて勘所があります。なので、直感的に仮説を立てながら分析を進められました。
 
もしロバート・フリップがクリムゾンのセットリストを作っているのならば、この統計分析により彼の思考過程の一部を覗き見することができたことになります。なんてこった! 超やばいね。
 
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■追記: 

ハッシュタグを付けてtwitterinstagramに投稿してたら、なんとロバート・フリップ先生に見付かり、Facebookでshare頂きました。あわわわ、明日以降のセットリスト作りに影響しませんように。。。

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