ギターを科学する 〜ピックアップの音量の真実 パッシブ編〜
前ブログにてアクティブピックアップの音量を測定し、比較した。同様にパッシブでも比較する。
どうやって測ったのか?
使ったピックアップはSeymour DuncanのJBと59neck(図1)。力強く腰のある音が特徴で、DeMarzioやBartoliniと並んでパッシブの定番である。またピックアップから4芯が出ているので、シングルとハムバッカーをタップで切り替えることが可能。シングル/ハム、ミックス/単体 を変えることで、8通りの組み合わせが存在する。
pure dataのパッチ(図2)は前ブログから変えていない。シンセ波形をオーディオインタフェースから出力し、スピーカーで鳴らし、それをピックアップで拾い、オーディオインタフェースから入力された音のエンベロープを数値化する。
どんな音量? ハムとシングル 単体での比較
まずピックアップを単体で音を拾い音量を測定した。シングルとハムバッカーはタップで切り替える。
全体的に59nよりJBの方が音量が大きいというピックアップの特性が見られる。通常JBはブリッジ側に配置しバッキングに使用する理由が見て取れる(EMGの81と85の使い分けと同じ)
また、シングルとハムで比較したときに、59nもJBもシングルの方が音量が大きい。これは今まで「ハムバッカーはシングルの2倍拾うので音量が大きい」と、まるで「コイルが多いハムバッカーは最強」のように思い込んでいたが、真逆の結果である。ハムバッカーがシングルよりも音量が小さい理由は、ハイインピーダンスな2つのコイルをシリーズ接続(直列接続)するため、得られる電圧以上に負荷となるためであろう、と推測できる。それにしても驚いた!
シングルに固定、単体とミックスでの音量の比較
シングルx2のパラレル接続とはいわゆるストラトのハーフトーンと同じ接続であるため、高次倍音がカットされマイルドな音が出る、というのが一般的な認識である。測定結果を無理矢理考察するに、ピックで弾いた時のピッキングノイズを良く拾うのでニュアンスが出やすい、ということか。実際に弾いて確認したい。
ハムに固定、単体とミックスでの音量の比較
次に、ハムx2をピックアップセレクターで切り換える配線の場合。前のブログ記事でアクティブでの計測のパッシブ版である。
傾向は一つ↑のケース(シングルに固定)と同様である。ハムx2をミックスするとホワイトノイズを良く拾うので、弾いたニュアンスがどう出るか、実際に弾いて確認したい(要は結論の先延ばし その2)
ミックス時のシングル/ハムを組み合わせた時の音量の比較
2つのピックアップをミックスすることは変えずに固定し、それぞれのピックアップのシングル/ハムをタップで変えた比較。
これら4つの組み合わせにおいて、シングルx2の場合の音量が最も大きくなる。逆にハムx2の音量が最も小さい。これはパッシブのインピーダンスの大きさゆえに打ち消す力が働き抵抗となることが推測される。ここでもピックアップのシングル率が増えるとホワイトノイズを良く拾う傾向が出ている。
考察と最後に
どんな組み合わせにおいても「ハムよりもシングルの方が音量が大きい」という結果になったことには驚きである。これが分かっただけでも計測した意義があった。
次にアクティブ編と合わせた総括を行う。本測定結果から言えることは、アクティブに比べてパッシブは入力する波形によってその傾向がガラリと異なることなることである。つまり演奏時の弾き方、弦の材質の選び方、ボディでのピックアップの位置、などのピックアップ以外のパラメータが複雑に影響してくることが想像される。つまり、アクティブピックアップを載せれば、どんな演奏者やどんな楽器であってもそこそこちゃんとした音が鳴る、ということである(あくまで比較として)
実際にはピックアップを選択するときに「高音域が抜けて出てくるもの」「中音域に粘りがありリードを取りやすいもの」といった欲しい音のイメージから始まる。ゆえに、本評価において音量の現実を知ったところでそれだけでピックアップを選択することはできず、結局音質を決めるピックアップの特性を無視することはできない。つまり、音量の変化を気にすることに(結果的に)大きな意味はなく、それを気にする人も居ない訳である。そういった情報を記載したサイトがないことも納得できる。
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*1:※グラフ中のSはシングル、Hはハムバッカー